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研究情報

研究情報についてご紹介いたします。

脳腫瘍分野

神経膠腫の化学療法

悪性神経膠腫に対して、2013 年のBevacizumab(アバスチン™)承認以降、主に摘出不能例を対象として積極的に初期治療から本剤を使⽤する治療戦略を採⽤し、後⽅視的解析を⾏ってきました。

その結果、初期治療中の臨床状態(PS)を維持できる症例が有意に増加、承認以前よりもPS 不良症例における⽣存期間の有意な延⻑が得られることを証明しました。(Hata,Oncotargets and Therapy 2017)

また2013年以降、膠芽腫においてアバスチンによる⾼リスク症例の治療成績改善に伴い、⽣存中央値が延⻑する傾向が⾒られ、MGMT⾮メチル化の症例では有意な⽣存期間の延⻑が得られるようになっています。(Hata, J Neurooncol, in press)

このような治療成績の解析を踏まえ、九州⼤学病院では⾼リスクの症例に対しては、初期治療からアバスチンを使⽤する治療戦略を採⽤しております。また、再発時にはIMRT による寡分割の放射線再照射をアバスチンと組み合わせて⾏う症例が増えており、今後は初期治療においても寡分割照射とアバスチン投与の複合治療を導⼊する⽅針としています。

遺伝⼦解析に基づく治療戦略の確⽴

近年、神経膠腫において分⼦病理診断が⽬覚ましい進歩を遂げ、2016年にはWHO分類が改訂され、分⼦病理診断による分類名が正式に採⽤されました。神経膠腫の分⼦系統樹が確⽴され、遺伝⼦解析が臨床においても必須となっています(下左図)。

九州⼤学では、⾼解像度融解曲線分析(HRM)を応⽤し、IDH1/2、BRAF、H3F3A遺伝⼦の点変異を⾼感度で検出可能な解析法を開発しました(上右図)。(Hatae, PLOS One 2016)

IDH変異の有無と、LOH解析による1,10,19番染⾊体⽋失の所⾒により、分⼦系統樹に基づいた3 グループに分類した治療層別化を⾏い、予後が明確に異なる治療成績となることを証明しました。(Hata, Oncotargets and Therapy 2016)

九州⼤学病院では、遺伝⼦点変異解析(IDH1/2, BRAF V600E, H3-K27M, G34R, TERTpromoter)、LOH解析(1p19q共⽋失、10番染⾊体)、MGMTメチル化解析の3つの解析を組み合わせて分⼦診断を⾏い、「⾼悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝⼦検査」として先進医療の承認を得て、⽇常診療に導⼊しています。

脳腫瘍の分⼦診断、画像所⾒、治療および予後に関する総合的研究

当科では脳腫瘍に対して、主にMRIで⼿術前・後および放射線化学療法期間中に複数回の画像検査を⾏っております。治療経過中の画像上の変化と前述の遺伝⼦診断の結果や患者毎の背景因⼦、臨床経過を多⾓的に解析することで、治療有効性や予後の予測につながる因⼦を⾒出すことを⽬的とした研究を⾏っています。

脳腫瘍組織からの腫瘍(幹)細胞株の培養、分離および解析

近年、脳腫瘍の腫瘍細胞の中に少数の腫瘍幹細胞と呼ばれるものが存在することが明らかにされています。腫瘍幹細胞は化学療法や放射線治療が効きにくい特徴があり、また、少数の腫瘍幹細胞でも腫瘍を再発させることができるなど、腫瘍の治療のためには腫瘍幹細胞を治療の標的とすることが重要と考えられるようになってきました。当研究室では、腫瘍組織から得た細胞をから腫瘍幹細胞を分離培養し、その⽣物学的解析を⾏っています。この解析により、脳腫瘍の原因や病気の性質を解明し、さらに新しい治療法の開発につながる情報を得ることを⽬的としています。この研究では、脳腫瘍の⼿術の際に採取した腫瘍組織から、病理診断などに⽤いる検体の残りを使⽤するため、研究にともなう患者さん⾝体への負担や危険性はありません。摘出された腫瘍組織を処理し培養で得られた腫瘍細胞株や腫瘍幹細胞株を元に様々な基礎研究を⾏っております。

免疫療法に関する臨床研究

ヒトの身体は免疫によって、異物やガンを排除する仕組みを持っています。しかし、免疫が弱かったりブレーキがかかっていたりすると、うまく異物やガンを排除できず感染症やガンになってしまうと考えられています。近年、免疫のブレーキを外す薬であるPD-1阻害抗体(免疫療法の一つ)が様々なガンに対して効果を示し、実用化されてきています。現在、脳腫瘍に対して実用化されている免疫療法はありません。当科では髄膜種の患者さんを対象にPD-1阻害抗体の臨床試験を行っています。
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悪性脳腫瘍に対するliquid biopsyの研究

腫瘍における多様性には腫瘍内や腫瘍間(原発/浸潤/播種病変)のような空間的多様性と腫瘍発⽣、悪性化、治療抵抗性獲得などの時間的多様性がありますが、従来の摘出標本の部分的解析のみでは解明できない特性でした。近年の遺伝⼦解析技術の⾶躍的進歩に伴い、微量の核酸解析が可能となり、体液中circulating cell-free DNA (cfDNA)、microRNA(miRNA)の解析によるLiquid Biopsyが可能となりつつあります。我々は悪性神経膠腫において網羅的なmiRNA の発現解析を⾏い特異的なmiRNA 発現を同定し、特にmiR-196 が悪性神経膠腫の病態形成に重要な役割を果たしていることを報告しました(Guan, clin cancer res2010)。現在、我々は悪性神経膠腫患者の体液中より腫瘍特異的な変異遺伝⼦の同定が可能か検討を⾏なっております。それらは、腫瘍が分泌するもの、腫瘍の壊死、アポトーシスに伴い放出されるものが網羅的に含まれている可能性があり、腫瘍全体の変化をモニタリングできる可能性があります。これまで不可能であったリアルタイムのモニタリングが理論上可能となります。また、⼿術と⽐較し、⾮侵襲的解析であり、術後経過を追跡した解析を⾏うことが可能なため、時間的多様性を追求することを⽬指しています。臨床研究「Liquid biopsy(リキッドバイオプシー)による脳腫瘍新規診断バイオマーカーの探索」
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